ひとり旅愛好家、旅をする

旅をメインに美しいモノコトヒト、そして美しい言葉を美しく

旅をする仲間 2/2

 

violetmacaronrose.hatenablog.com

 

 

彼女が予約してくれていたのは

生ガキや生の貝を氷で冷やしたまま

いただくことで当時とても有名なレストランで、

到着したときには大行列だったし店内は満員の大盛況。

どれもこれもおいしくて、とにかく楽しくて

夜遅くまでおしゃべりが尽きなかった。

「明日はどうしているの?」

と聞かれたので、ひさしぶりにルーブル美術館へ行こうと思うと言うと

「じゃあ仕事を休むからいっしょに行こう」

という。

「だって、しゃべり足りないじゃない」

そう言って彼女は笑った。

あたしも全く同じ気持ちだったので彼女の申し出はうれしく受け取った。

 

夜遅くなってアパルトマンにたどりつき、

さっきまでの楽しかった余韻を感じながらベッドに横になると

部屋の電話が鳴った。

誰かと思ったら、Pさんだった。

「いま、パリにいるの。あなたがいるのを聞いていたから

心配ないと思って来ちゃったわ」

日本の知り合いが偶然(?)おなじパリにいるなんてそうそうあることじゃないので

ついうっかり、うれしいと言ってしまったのが運の尽きだったことを知るのはまもなく。

 

翌日、パリ在の友達とルーブル美術館前で待ち合わせ、

彼女の知り合いのキュレーターさんのおかげで行列に並ばず入館し、

おしゃべりしながらゆっくり見て歩いた。

そこへPさん登場。

全身ブランドものに身を固め、ゴージャスにジュエリーをたくさん身に着けていた。

パリ在の友達はちょっと顔をしかめて

「仲のいい友達なの?本当にトモダチ?」

うん、友達ではあるよ。

そしてそこからPさんのお願い攻撃が始まったのである。

 

パリ在の友達はスイス人なので、フランス人特有の意地悪さを身を以て体験していて

常々あたしにも

「フランス人を心から信用しちゃだめよ」

言っていたし

「見た目ばかり飾ってる日本人はパリのドロボウやスリのいいカモだから

ぜったいにブランド物は身に着けてこないでね」

口酸っぱく言っていて、年若いあたしもそれは守っていた。

だからPさんを見て驚愕するよりは立腹したんだろうと思う、

ランチもそこそこに、また連絡するわね、とあっさり帰ってしまった。

 

「お買い物に一緒に行ってもらえると思ったのに」

Pさんが言った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

どこそこのお店のナンタラいう商品があるかどうかを聞いてほしかったし

銀食器類で有名なクリストフルの(今思えば)アウトレットがあるらしいけど

それはどこにあるのか調べてほしかったのに。

そしてそれらはすべてあたしの作業にすり替わったのである。

その当時はネット環境も貧弱で、手軽に調べて分かるということはなく

細かなことは現地の方に聞くか

自分のアシでたどり着くしかなかったのである。

 

結論から書こう。

 

Pさんは着ていたコートのポケットに入れていたお財布をすられ、

クリストフルでの会計のときに気が付いた彼女、

「いっしょに警察に行こう」

クリストフルの店員さんの困惑した表情はいまでも忘れられない。

 

f:id:violetmacaronrose:20220216161408j:plain

※イメージ画像です

 

クレジットカードも失くした彼女はパリ滞在中のちょっとした経費すらなく

結局あたしがキャッシングで立て替えることになった。

でもまだ若かった当時のあたしのクレジットカードの限度額は

彼女に立て替えた分でほぼ埋まってしまったため

その後の自分の分が覚束ない、そこで

日本のクレジットカード会社に国際電話をかけ

事情を話して枠を広げてもらったていたらく、

とことん「呪われたパリ滞在」になった。

帰国後、いちどだけPさんと会ったが、互いに違和感を覚えたからか

以来交流はない。不幸な経験になってしまった。

 

いっしょに旅をする仲間はできれば同じベクトルであってほしい。

旅の日程の長短を問わず

仲間に負担をかけない関係でありたい。

 

でもPさんの件はあたしも反省してる。

安請け合いしているつもりはさらさらないけど、

つい余計なお世話で、面倒を見てしまうことがある。

自分の時間と経験を最大限確保するために

「旅の主役は自分自身」を旨としておかねば。

 

 

遊ぶきもちってたのしくうれしい。

 

 

 

にほんブログ村 旅行ブログ 女一人旅へ
にほんブログ村