ひとり旅愛好家、旅をする

旅をメインに美しいモノコトヒト、そして美しい言葉を美しく

両親亡きあとの部屋の処理

 

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母の祥月命日を終え、

来月は父の祥月命日がやってくる。

父が退官したあと、大きな一軒家を処分(売却)して

都内に小さい一棟のマンションを贖い、

その一室に細々と暮らしていたふたり。

体の弱かった母を見送り、同じマンションに暮らす

ウチのお子らとわんこたちの様子を見ながら

日がな過ごしていた父も母の17年後に鬼籍に。

 

お子らが留学したり別かまどになり広すぎる部屋を持て余したあたしも

別のマンションに移ったので両親の遺した物件を処理することにした。

ほかの部屋には店子さんたちが入居しているので両親の部屋だけ。

本だのパソコンだの、成績が優秀でそれがひそかな自慢だった両親の成績表だの

卒業証書だのそれぞれの幼いころからの写真だのあたしのそれらだの。

とにかく

「残念だし悲しいけど、いまのあたしにはひとつも要らないもの」

ばかりが残っていた。

もちろん、日常生活に必要なあらゆるものもすべて。

 

一級建築士のトモダチに相談した。

こういう場合、どうやって処理するべきなのか。

相談されたらあなたはいったいどういうアドバイスをしているのか。

すると彼はいとも簡単に言い放った。

 

「神棚とか仏壇はお焚き上げしてもらうし

それ以外のものは廃品回収業者に回収してもらうんだ」

 

そこには感情も感傷もない、だから

 

「肉体だけじゃなくて精神的にも感情的にも疲労はない」

 

そこだった。

いちばん危惧していたのは

「感傷的疲労

だったんだ。

そこでそのトモダチに立ち会ってもらい、ざっと計算してもらうと

「100万ってところかな」

国宝級とは言わないけどそれなりの銘のあるやきものや家財なども

「だったら自分で処分すればいい」

 

両親の部屋が空いてもどなたかに使ってもらうことは考えていないから

急いで処理する必要はなかったけど

いつまでも心の負担になるのはあたしの性格上無理だったので

そのトモダチに委ねることにした。

送られてきた請求書には出精値引きで丸められていたので

すこしは懐が温かくなったのかもしれないな、それはそれでよろしくて。

 

春を迎えて新しいプロジェクトが始まったあのころ。

とうとうこの世には困ったときさみしいときくるしいときに

話を聞いてくれる存在がいなくなったことが

悲しくもあり切なくもあり

でも

「人生なんとかなるもんだ、なるようになる」

父の言葉を思って後ろを見ないようにしてきた。

 

そしていま、

あたし自身の終末へ向かって同じことを考えておかなくちゃ、と

思い始めているところ。

ギリシャであれほど強く感じたあの思い。

 

violetmacaronrose.hatenablog.com

 

 

お子らにこの部屋の処理をさせるのは忍びない、

だけど残されたものたちがどうすればいいのかを

(父があたしにしておいてくれたように)

紙に書いて残しておかなくちゃだ。

 

 

 

少し痩せて体調がよくなったところでみな平等に時間は過ぎゆき

「もう旅をする体力どころか気力も薄れてきたわ」

とこぼすシニアの友達たちの言葉を耳にしたあたし、

今日はなんだかしんみりした。

 

 

 

 

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